診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違いとは?
これから医療事務の資格を取得しようと思っている方の中には「診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違いって何だろう?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
どちらも医療事務の資格には間違いはありませんが、資格の主旨や取得の難易度、業界での認知度などには大きな違いがあります。
そこで今回は「診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違い」について詳しくお伝えします。
※ 診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークには医科と歯科に分かれていますが、医科での比較になります。
診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違いとは?
診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違いには以下のようなことが挙げられます。
① 主催団体が違う
「診療報酬請求事務能力認定試験」は公益財団法人日本医療保険事務協会が認定する資格で「メディカルクラーク」は一般財団法人日本医療教育財団が認定する資格です。
② 難易度が違う
「診療報酬請求事務能力認定試験」の合格率は30%前後です(医療事務の資格試験の中で最も合格率が低い)。
一方、「メディカルクラーク」(医療事務技能審査試験)の合格率は、50~60%と言われています(試験の実施団体は合格率を公表していない)。
特に「診療報酬請求事務能力認定試験」は、出題範囲が広く、問題の難易度が格段に高いと言われています。
実際問題、医療事務の実務に既に就いている方でも試験勉強を始める際は「相当難しい・・・。」という実感を持つようです。
③ 試験の出題形式が違う
「診療報酬請求事務能力認定試験」「メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)」ともに学科試験と実技試験が課されます。
筆記試験はどちらの試験も択一式ですが、実技試験は出題形式が少し異なります。
「診療報酬請求事務能力認定試験」の実技試験は手書きのレセプト作成(外来と入院)が1問ずつ出題されます。
特に入院のレセプト作成問題は、難解と言われています。
一方、「メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)」は、実技試験Ⅰ(患者接遇の記述式問題)と実技試験Ⅱ(レセプト点検問題 4問)が出題されます。
実技試験Ⅱ(レセプト点検問題)は、4枚のカルテをもとにそれぞれ作成されたレセプト4枚を突き合わせし、誤りを訂正するという内容です。
④ 認知度・評価が違う
「診療報酬請求事務能力認定試験」は認知度が高く、医療機関からも高い評価を受けています。
それが証拠に「診療報酬請求事務能力認定試験」の合格者に資格給を支給している医療機関もあります。
それに診療報酬請求事務能力認定試験の合格者は就職試験でも有利になるケースがあるようです。
一方、「メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)」は50年近くの歴史があり、医療事務資格の中でメジャー資格の1つですが、診療報酬請求事務能力認定試験ほどの認知度・評価はありません。
⑤ 受験方法が違う
「診療報酬請求事務能力認定試験」は会場試験ですが、「メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)」は在宅試験です。
「メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)」は、自宅で受験して試験翌日までに答案用紙を試験の実施団体(日本医療教育財団)に郵送で返送します。
診療報酬請求事務能力認定試験(医科)に関して
診療報酬請求事務能力認定試験は、内閣府認定の公益財団法人日本医療保険事務協会が年2回(7月・12月)実施する試験です(平成6年~)。
試験に合格することで認定証が授与されますが、「~士」、「~クラーク」といった称号が与えられるわけではありません。
診療報酬請求事務能力認定試験のことを“公的資格”と紹介しているメディアもありますが、民間資格です。
それは主催している団体が公的と認められているだけで試験自体が公的と認められているわけではないからです。
とはいえ、医療事務の資格試験の中では最も難易度が高いことが知られています(過去50回行われた試験の平均合格率は30.1%)。
【診療報酬請求事務能力認定試験(医科)の合格率の推移】
実施回 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
50回(2019年7月) | 3,947 名 | 1,374 名 | 34.8 % |
49回(2018年12月) | 6,119 名 | 1,738 名 | 28.4 % |
48回(2018年7月) | 3,894 名 | 1,618 名 | 41.6 % |
47回(2017年12月) | 7,019 名 | 2,152 名 | 30.7 % |
46回(2017年7月) | 4,688 名 | 1,479 名 | 31.5 % |
45回(2016年12月) | 7,232 名 | 2,840 名 | 39.3 % |
44回(2016年7月) | 4,581 名 | 1,339 名 | 29.2 % |
43回(2015年12月) | 8,038 名 | 3,107 名 | 38.7 % |
42回(2015年7月) | 5,529 名 | 1,845 名 | 33.4 % |
41回(2014年12月) | 8,130 名 | 2.608 名 | 32.1 % |
40回(2014年7月) | 5,665 名 | 1,670 名 | 29.5 % |
39回(2013年12月) | 9,391 名 | 2,903 名 | 30.9 % |
38回(2013年7月) | 6,733 名 | 2,201 名 | 32.7 % |
37回(2012年12月) | 9,289 名 | 3,096 名 | 33.3 % |
36回(2012年7月) | 6,339 名 | 1,885 名 | 29.7 % |
35回(2011年12月) | 10,521 名 | 2,916 名 | 27.7 % |
34回(2011年7月) | 7,561 名 | 2,071 名 | 27.4 % |
33回(2010年12月) | 10,316 名 | 2,763 名 | 26.8 % |
そのため、この試験の合格者には資格手当を付与している医療機関もあり、就職試験で有利になる場合があります。
この資格試験が生まれた趣旨は、“診療報酬請求事務に従事する者の資質の向上を図るため”です。
つまり、既に医療事務の職業に就いている方のスキルの向上を図るためです。
ですから、全く初めて医療事務を学ぶ方には少し敷居が高い資格試験と言えるでしょう。
実際に受験者の70%以上が再受験者と言われるほどです。
試験は学科試験(5者択一式計20問)と実技試験(手書きでレセプト作成:外来1問、入院1問)に分かれており、合計3時間です。
学科試験○分、実技試験○分と明確に決まっていないので、時間配分に気を付けて問題を解いていく必要があります。
医療事務の中で最もメジャーな資格試験なので、市販のテキストや問題集が一番入手しやすいので独学で合格を目指すこともできますが、かなりの気合と根性が必要でしょう。
この試験の対策講座には、たのまな 、ヒューマンアカデミー、フォーサイト 、アビバ(通学)などがあります。
【診療報酬請求事務能力認定試験(医科)の概要】
資格概要 | 診療報酬請求事務に従事する者の資質の向上を図るため、 公益財団法人日本医療保険事務協会が実施する 全国一斉統一試験。 |
受験資格 | 特になし |
試験日程 | 毎年2回 (7月と12月の日曜日または祝日) |
試験内容 |
■ 学科試験・・・・・計20問(5者択一式) ■ 実技試験・・・ ・・診療録(カルテ)から手書き方式で診療報酬明細書(レセプト)を作成する試験。 ※ 外来から1問と入院から1問の計2問 |
出題範囲 |
■ 学科試験 ① 医療保険 制度等・公費負担医療制度の概要 ② 保険医療機関等・療養担当規則等の基礎知識 ③ 診療報酬等・薬価基準・材料価格基準の基礎知識 ④ 医療用語及び医学・薬学の基 礎知識 ⑤ 医療関係法規の基礎知識 ⑥ 介護保険制度の概要 ■ 実技試験 診療報酬請求事務についての実技 |
時間 | 3時間 |
試験場所 | 札幌市、仙台市 、さいたま市、千葉市、東京都、横浜市、新潟市、金沢市、静岡市、名古屋市、大阪府、岡山市 、広島市、高松市、福岡市、熊本市、那覇市 |
受験料 | 9,000円(税込) |
合格発表 | 試験月 の翌々月末までに、全受験者に文書で通知。 |
合格基準 |
合格基準は、その都度異なります(その時の試験の難易度によって変動)。 下記は第50回の合格基準です。
■ 学科試験・・・・・70点以上 (100点満点)
■ 実技試験・・・・・75点以上(100点満点)
※ 実技試験は、解答された項目のうち正解した項目に応じてあらかじめ素点を算出し、得点が 100点満点となるよう換算して採点されます。 |
主催団体 |
公益財団法人 日本医療保険事務 協会 〒101-0047 東京都千代田区内神田 2-5-3 児谷ビル 電話 03(3252)3811(代) FAX 03(3252)2233 |
備考 | 試験会場への診療報酬 点数表、その他の資料の持ち込みは自由。 |
メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)に関して
医療事務技能審査試験は、一般財団法人日本医療教育財団が年12回(毎月)実施する試験です。
試験は1974(昭和49)年から実施されており、年間受験者数も多く、メジャーな資格の1つです。
試験に合格すると、メディカルクラークの称号(資格)が与えられます。
合格率は非公表ですが、50~60%だと推定されます。診療報酬請求事務能力認定試験よりは難易度は低いと言えます。
診療報酬請求事務能力認定試験が既に医療事務の職業に就いている方向けの資格試験であるのに対して医療事務管理士は、これから医療事務の職業に就こうとしている方向けの資格であると言えます。
試験は学科試験(択一式計25問)と実技試験Ⅰ(患者接遇)、実技試験Ⅱ(レセプト点検 4問)に分かれており、合計3時間です。
時間は、学科試験が60分、実技試験Ⅰが50分、実技試験Ⅱが70分と明確に決まっています。
この試験に対応している講座は、ニチイ学館です。
受験資格が特に設けられていませんので、独学で取得を目指すことも可能です。
【医療事務管理士 技能認定試験(医科)の概要】
資格概要 | 医療事務業務に従事する者の知識および技能の程度を審査し、証明することにより、医療事務職の職業能力の向上と、社会的経済地位の向上に資することを目的として実施。 |
受験資格 | 特になし |
試験日程 | 年12回 (毎月) |
試験内容 |
■ 学科・・・・・医療事務知識 筆記(択一式) 25問(60分) ■ 実技 I ・・・・・患者接遇 筆記(記述式) 2問(50分) ■ 実技 II ・・・・・診療報酬請求事務 明細書点検 4問(70分) |
出題範囲 |
■ 学科 ① 医療保険制度 ■ 実技Ⅰ コミュニケーション(医事課患者応対) ■ 実技Ⅱ 診療報酬請求事務・・・医科診療報酬明細書(出来高請求)の点検 |
時間 | 3時間 |
試験場所 | 在宅試験 |
受験料 | 7,500円(税込) |
合格発表 |
試験日から約1ヵ月後に郵送で通知。 ※ 実技試験 I ・II および学科試験の各々の得点率が70%以上で合格。 |
主催団体 |
一般財団法人日本医療教育財団 〒101-0064 東京都千代田区猿楽町 2-2-10 TEL:03-3294-6624(代) FAX:03-3294-1787 |
備考 | 試験はテキストの持ち込み自由。 |
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、「診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違い」についてお伝えしました。
診療報酬請求事務能力認定試験とメディカルクラークの違いを端的に言うと、以下のようなことが言えると思います。
・診療報酬請求事務能力認定試験は、既に医療事務の仕事に就いている方がスキルアップのために取得する資格
・メディカルクラークは、これから医療事務の仕事に就こうとする方がチャレンジするのに向いている入門資格
これから医療事務の資格を取得しようという方はまずは「メディカルクラーク」にチャレンジし、ステップアップで診療報酬請求事務能力認定試験にチャレンジするのが良いのではないでしょうか。